銀行がカードローンに熱心な理由

カードローンを知る・学ぶ

銀行カードローンの利用者が増えています。消費者金融などノンバンクの専売特許だったカードローンですが、銀行はなぜ個人向け融資に熱心なのでしょうか。その背景を考えてみます。

ドル箱「企業融資」が低迷で収益探し

銀行の最大の収益は、企業融資で得る金利です。企業はより多くの利益を上げるため工場などの生産設備を拡充し、そこで働く従業員を増やします。設備の充実や人材の確保には資金が必要で、そのための資金を銀行から借ります。企業の生産活動が活発になればなるほど借り入れる資金は巨額になります。銀行は融資を望む企業に資金を提供し、そこで得た金利収入を蓄積して巨大化していきました。

しかし、1980年代以降、有力企業の多くは設備投資資金を銀行融資だけに頼ることをやめて、証券市場で調達するようになりました。社債や株式を発行して資金を集めるほうが銀行から借りるよりも低コストだからです。1990年代後半になるとバブル経済が崩壊して景気は低迷し、企業の設備投資意欲が低下。企業の銀行離れが加速します。大手の銀行は大企業中心の融資から中小企業への融資に乗り出していきます。しかし、銀行同士の貸し出し競争が激しくなって金利収入は細っていきました。

そこで銀行は減少する企業融資を補うために、新たな収益源を探すことにしました。それが個人への融資です。しかし都市銀行や地方銀行などは1970年代中盤、個人向けのカードローンを取り扱いましたが、返済が遅れたとき、借り入れした人に返済を促す催促(回収)業務が上手くいかずに撤退した苦い過去がありました。一方2000年代に入ると、個人向け無担保ローンを主力商品とする大手の消費者金融やクレジットカード、信販会社などのノンバンク大手が急速に収益を伸ばしていきました。そこでメガバンクは大手の消費者金融と提携し、協力関係を築くことにしたのです。

貸金業法施行で利用者が銀行カードローン市場に

メガバンクなどの大手銀行は、協力関係にあった大手の消費者金融との間で消費者ローンの子会社を設立するなどして業容拡大を図っていましたが、2007年に貸金業法が制定されたことで、様相が一変します。それまで消費者金融やクレジットカード、信販会社などのノンバンクの個人向け無担保ローンの年金利は25%~28%前後でしたが、貸金業法で銀行と同じ上限金利(最大20%)が個人向け無担保ローンで適用されることになったのです。1980年代、ノンバンクなど貸金業者のローン金利は最大で年103.5%と定められていました。貸金業者の上限金利はその後29.2%まで下がりましたが、手続きをすればその時代に借りたローンの返済金が戻る(過払い金)ことになり、多くの利用者が過払い金の請求を行いました。貸金業者はその対応のために莫大な資金の準備を迫られ、かつて業界最大手だった武富士が2010年に倒産したほどでした。

カードローンを利用したい人は、消費者金融も銀行も借りる金利が同じならば、知名度、ブランド力のある銀行で借りようとする心理が働きます。こうして、いままで消費者金融などノンバンクで借りていた利用者が銀行のカードローンの世界に大挙押し寄せ、銀行はさらに新たな利用者を集めるため広告宣伝に力を入れるようになりました。

銀行は前述したように、回収業務が苦手で一度はカードローンから撤退しました。それをどうやって克服したのでしょうか。それは、審査から回収までのカードローン業務(「保証業務」といいます)を消費者金融などのノンバンクに全面委託することでクリアしているのです。借りているのは銀行でも、実態はノンバンクから借りているのと同義なのです。

ノンバンクは銀行カードローンにおける保証業務を請け負うことで保証料という手数料を得ています。自前でカードローンの利用者を増やして金利収入を得ることよりも、業務提携している銀行から保証料をもらって業績を上げようとしているのです。また、委託されている銀行は、同じ金融グループの仲間となっていることがあり、保証業務を通じて銀行とノンバンクは共存共栄の関係にあります。

たとえば、三井住友銀行でカードローンを申し込むと、消費者金融大手のプロミス(SMBCコンシューマーファイナンス=SMBCCF)が審査から回収までの一切の業務を行います。三井住友銀行もSMBCCFも三井住友フィナンシャルグループ(FG)の一員です。三井住友銀行は利用者からのローン金利収入、プロミスは三井住友銀行からの保証料収入を得ます。そしてこの2社は三井住友FGのグループ会社。双方の利益はグループの利益となるのです。

インターネット全盛で審査簡便化、銀行が目指すビッグデータ

カードローン市場は、2013年度に銀行業界がノンバンク業界を追い抜き、現在は10兆円市場のうち銀行業界がその6割を占めています。インターネット全盛のいま、カードローンはネットで申し込み、コンビニATMで返済する時代です。銀行は審査から回収までの保証業務をノンバンクに任せています。カードローンの保証料は、大まかに言って金利18%ならば3%から7%程度。利用者の返済能力によって保証料の金額は決まります。保証料をノンバンクに払ってもなお、銀行カードローンはいまや銀行にとって重要な収益減になっています。

個人融資は返済困難または不能に陥るリスクがあります。このリスクを少しでも減らすには、審査の精度を上げる必要があります。そのためには一人でも多くの申し込み情報を収集して分析し、審査レベルを上げることが求められます。貸せる人だけがアクセスするのではなく、貸せない人にもサイトに来てもらい、ビッグデータを構築していくことが、カードローン競争で勝ち抜く決め手になるのです。できるだけ多くの人の返済能力に関する情報(個人信用情報といいます)を集めて返済リスクの確率を上げることが、カードローンの収益向上につながるからです。

銀行がカードローンに熱心なのは、企業融資が細って収益が低下し、それを補完するために始めたことが第一の理由です。そして貸金業法の施行で銀行とノンバンクが同じ土俵(貸し出し上限金利)で競うことになったことが第二の理由です。銀行カードローンはいま、活況を呈しています。今後も、銀行は収益拡大のため、ITを駆使して審査の簡便化と高精度化を図り、カードローン業務を推進していくのは間違いありません。

この記事の執筆者情報

・平木恭一/ライター・経済ジャーナリスト
金融業界紙元編集長。銀行・信用金庫、ノンバンク(クレジットカード・信販・消費者金融)、保険・証券の取材・執筆歴は30年以上。1999年から大手経済情報誌などに寄稿しています。秀和システム社の「図解入門業界研究」シリーズでは2003年から「金融業界」「銀行業界」「クレジット/ローン業界」「小売業界」の執筆を担当、改訂版を重ねる一方、2014年からは投資家向け企業情報誌の記者も務めるなど、取材範囲を広げています。