進むキャッシュレス化!あなたの金融リテラシーは大丈夫?

お金の悩み

2017年に経済産業省が公表した「未来投資戦略2017~Society5.0の実現に向けた改革~」によって、キャッシュレス決済の話題が盛んに取り上げられるようになりました。

特に2018年は、キャッシュレス元年と言われるほどの過熱ぶりであったことも記憶に新しいものです。

現在、日本のキャッシュレス決済比率は約24%程度にとどまっていますが、今後、日本政府は2027年までに2倍の40%程度まで上昇させることを目指しており、これは世界標準を意識したものといえます。

これらを踏まえ、今まで日本国内でキャッシュレス化が進まなかった背景やキャッシュレス化のメリット。そしてそれに伴う金融リテラシーの必要性について述べていきたいと思います。

キャッシュレス決済比率とは?

キャッシュレス化を示す指標として欠かせないのがキャッシュレス決済比率といわれるもので、これは次のような計算方法によって求められます。

キャッシュレス決済比率=キャッシュレス支払い手段による年間支払い金額÷国の民間最終消費支出

ただし、この中でキャッシュレス支払いに該当するのは「クレジットカード(後払い)」や「デビットカード(即時払い)」、そして「電子マネー(先払いもしくは後払い)」です。その他の銀行振込や個人間送金サービスなどは含まれていませんのでご注意ください。

キャッシュレス決済比率の推移

キャッシュレス支払額と民間最終消費支出に占める比率
(出典:一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ 2019」)

この図は2008年以降の民間最終消費支出に占めるキャッシュレス決済比率の推移を示したものです。

2008年以降、キャッシュレス決済比率は上昇しており、内訳をみるとクレジットカード決済が中心になっていることが分かります。

日本が目指す世界標準

冒頭で述べたように、我が国の2018年時点でのキャッシュレス決済比率は24%程度ですが、これは世界的に見てかなり遅れている数値です。

2015年に世界銀行が調査した結果によると、一番高いのは韓国(89.1%)、そして中国(60.0%)、カナダ(55.4%)と続いています。

日本はその時点で18.4%と先進国の中でも低い比率となっており、政府は外国人観光客が増えてきている現状に対応するためにも、今後の10年間で現在の数値を倍増する計画を立てているのです。

店頭でのキャッシュレス決済にはどんなものがある?

店頭でのキャッシュレス決済にはどのようなものがあるのかをご紹介します。

クレジットカード決済

何年か前まではクレジットカードについては「1万円以上の利用」などの条件の下で使用されることが多く、決済時のサインや専用端末での暗証番号入力などの手間がかかるものがほとんどでした。

しかし現在では、大手スーパー(イオンやゆめタウンなど)のレジなどで「サイン不要」で使える場所が増えてきており、たとえ100円のような少額の買い物でも気軽に利用できるようになりました。

このクレジットカードの決済方法については、ほとんどが「口座振替」です。クレジットカードを作成する際に登録した口座から、クレジットカード会社の指定する日に毎月の利用額の合計が引き落とされる仕組みとなっています。

タッチ決済

最近急速に普及してきた交通系のICカードが該当します。

毎日の通勤にバスや電車を使っている方であれば、ほぼその交通機関で利用できるICカードを所有しているのではないでしょうか。

このICカードの特徴は「事前にチャージする」というものです。駅に設置されている専用機でのチャージはもちろん、銀行ATMからチャージできる場所も増えてきており、簡単に利用できるシステムになっています。

利用する際には専用端末にかざすだけでいいので、その手軽さも普及に加速がついている理由の一つになっています。また、最近では携帯端末やスマホに登録することで利用できることもあり、これからますます使い勝手がよくなっていくと思われます。

バーコード(QR)決済

最近見られるようになった「PeyPey」などが代表的といえます。

導入時の100億円キャンペーンはあっという間に達成してしまい、かなりの話題となりましたが、その後もいろんなキャンペーンを謳っています。

バーコード決済には2通りあり、「利用者がお店のQRコードを読み取る方法」とコンビニなどでよく使われる「利用者がQRコードを掲示し、お店側で読み取ってもらう方法」に分けられています。

バーコード(QR)決済の実際の決済についてはクレジットカードと連動させるものと事前にチャージするものなど多岐多様に渡っています。これは事業者毎のシステムに応じて対応しているためです。

日本のキャッシュレス決済が遅れている背景

日本でもかなり前からクレジットカード決済は行われていました。20年前にはカード破産という言葉も出ていたくらいです。

しかし、まだまだ「クレジットカードでお買い物をするのは一時的な借金をするのと同じこと」と考えている方も多いのが実情です。また、管理が苦手な人にとってはついつい使いすぎてしまうという不安もあります。

そして何よりも日本の治安の良さがキャッシュレス決済を遅らせている一番の原因と言われています。

海外旅行に行かれた方であればわかると思いますが、海外の治安状態は日本よりもかなり悪いです。日本でも最近では昔と比べると治安が悪くなったと言われていますが、海外に比べるとまだまだ治安の良さは際立っています。

他の国のように置き引きに合うリスクはまだまだ低いですし、日本国内でも良心的な人はたくさんいます。もし、財布や携帯電話を落としたとしても、警察に届けてくれる人が多いのが今の日本の実情です。そういった危機感の薄さが、キャッシュレス決済を遅らせているといっても過言ではないでしょう。

逆に言えば、今後キャッシュレス化が進むにあたり、「自分の身は自分で守る」という意識も必要になってくると言えます。

キャッシュレス化がもたらすメリット

キャッシュレス化がもたらすメリットについて解説します。

事業者

2025年に到来すると言われる「超少子高齢化社会」における最大の課題は人手不足の解消です。そのために企業や店舗そして金融機関もビッグデータを活用して販路を拡大するなどの対応に迫られています。

さらには人員配置の最適化を考慮し、大手スーパーなどでは「セルフレジ」などが多くみられるようになりました。また、携帯端末やスマホを活用してキャッシュレス決済だけでなく購入履歴などのデータを効率的かつ有効に活用することで消費者の購買意欲につなげることが出来るなどのメリットがあり、その効果は実証されつつあります。

公共的観念

上に述べた事業者におけるメリットの他、2018年10月に経済産業省が発表した「キャッシュレス社会への取り組み」によると、公共的観念からみてキャッシュレス化が進むことで「税金徴収の公正化および効率化」や「マネーロンダリングの抑制」に結びつくと言われています。

消費者

また、キャッシュレス決済は消費者側にも大きなメリットをもたらします。一番大きいのは「商品購入の際、金融機関の店舗やATMから現金を引き出す手間が省ける」ことです。

多額の現金を持ち歩くことは盗難や紛失のリスクを伴います。それが解消されるだけでもかなりのメリットと言えるでしょう。また、クレジットカード決済では不正利用があったとしても保障されるシステムが確立しているので、安心して利用することができます。

交通系のICカードなどでは、紛失した際の再発行に係る手続きもきちんと行ってくれる機関がほとんどですので、こちらも比較的に安心して利用できるのではないでしょうか。

現金を持ち歩かないということは盗難や紛失以外でも余分なお金を使わないなどという結果に結びつくこともあり、上手なお金の使い方に繋がります。

キャッシュレス化普及に向けての取り組み

今後の取り組みとして一番大きく謳われているものは、「支払い方改革宣言」と言われるものです。

2025年の大阪・関西万博に向け、前述の「未来投資戦略2017~Society5.0の実現に向けた改革~」で設定したキャッシュレス決済比率40%を前倒しで実現し、さらに将来的には、最高水準の80%を目指していくというものです。

そして2018年7月に設立された「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」による、オールジャパンの取組みとしては、業界横断的で産学官が連携した組織として産官学の有識者・実務家を結集し、2018年4月11日に経済産業省が公表した「キャッシュレス・ビジョン」が提言する方策を具体的に推進していくとしています。

キャッシュレス化の鍵「ポイント還元策」

政府は今後予定されている消費税増税について、消費者に対する期限付きのポイント還元策を用意しています。

具体的には中小の店舗にてキャッシュレス決済でモノやサービスを購入すると、個別店舗では5%、コンビニやガソリンスタンド、フランチャイズチェーン店舗では2%を消費者にポイント還元するなどです。

この「キャッシュレス・消費者還元事業」は2019年10月から2020年6月までの9か月間に渡る期間限定で実施されます。また、それに合わせ中小店舗に対するキャッシュレス決済端末の導入や決済手数料に対する補助金などの施策も用意されています。

これらの施策により、これまで決済手数料の高さからキャッシュレス決済に踏み切れなかった中小の店舗にとっては、より導入しやすい環境に移っていくことが予想されます。

消費者の金融リテラシー向上が課題

2018年6月に日本銀行が実施した「生活意識に関するアンケート調査(第74回)」によると、消費者が決済手段を現金かキャッシュレスかどちらかを選ぶ基準として最も重要視されるものは「ポイントや割引などの便利面」であり、50.6%を占めています。

この結果からも、先に述べたポイント還元策による消費者のキャッシュレス決済へのシフト化が期待されるところです。

その他重視するポイントは「支払い金額の大きさ(41%)」「支払い手続きのスピードおよび簡便性(37.2%)」となっており、高額商品のクレジット決済については以前よりも増してクレジットカードの補償機能が重視されてきていることを裏付けています。

ただ、ここで注目したいのが「キャッシュレス決済をすることによって使いすぎてしまうかもしれない」という不安の声が33.5%を占めている事です。

これは、同じ1万円でも「現金決済」と「キャッシュレス決済」では価値観が違うということを意味しています。

例えば「あえて使える予算額を現金として持ち歩くことで、節約につなげる」という考えを持っている方も少なくないということでしょう。また、「本当は現金を持ち歩きたくないが、キャッシュレス決済方法が多岐に渡りすぎてどれを選んだらいいのかわからない」という本音もあるようです。

キャッシュレス決済は便利だけれど、複数の決済手段を登録し、使い分けるのが面倒」となると、まだ現金決済の方が効率的と考えるのも頷けます。

今後、キャッシュレス化は確実に進んでいきます。そんな中、一番重要なのは「現金決済と比較し、確実にキャッシュレス決済の方に付加価値がある」というものを見つけ出すことです。

例えば「家計アプリと連動させることで使った額を把握する」、「切りの良い額を支払い、差額(お釣り)は投資に回すアプリを利用する」など、スマホ上にもいろんな付加価値のあるアプリやサイトが存在します。

『多岐に渡るキャッシュレス決済手段に付随する、様々な付加価値の内容を把握し、その中で何が一番自分に合っており、そしてそれを長期に渡って使いこなすことが出来るか』を見つけ出すことが、今後の消費者の課題となってくると言えるでしょう。

この記事の執筆者情報

・新井智美/トータルマネーコンサルタント
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産運用)、CFP®認定者、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入の アドバイス)の他、資産運用など上記内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う。また金融全般について執筆・監修業も手掛ける。