カードローンが原因で銀行口座が凍結?預金の差し押さえよりも怖いこと

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カードローンが原因で銀行口座が凍結?預金の差し押さえよりも怖いこと

Q)カードローンが原因で銀行口座や預金が差し押さえになるの?
A)なります。正確には「時と場合によっては差し押えになる」です。

カードローンと差し押えをキーワードに検索すると、「預金差し押さえ カードローン」「口座 差し押さえ カードローン」など、実にさまざまな記事が出てきます。それだけ注目されているわけですが、逆に情報がありすぎてわかりにくいとも感じます。

この記事では、カードローンが原因で銀行口座は凍結するのか?について、銀行員の筆者が解説します。

この記事でわかること

  • そもそも差し押さえってなに?
  • どうなると預金が差し押えられてしまうの?

そしてタイトルにもあるとおり、預金の差し押さえにはもっと恐ろしいことがあるので、この点についてもわかりやすく説明します。

カードローンが原因で銀行口座や預金は差し押えられる?

カードローンと銀行の預金口座の差し押さえは密接に関係しています。

それらは「直接的な影響」と「間接的な影響」の2つに分けられます。

直接的な影響とは、カードローンが原因で銀行口座が差し押えられることを意味します。

そして間接的な影響とは、テーマにもある「恐ろしいこと」を意味しており、こちらについては後ほど詳細を説明します。

この後の説明をより理解しやすくするため、まず差し押えについての基本事項からお話しすることにします。

差し押さえの基本事項~口座凍結との違い

まずは差し押さえについての基本的な説明をします。

現在ネット上には記事が氾濫しており、差し押えについても何が真実なのかわかりにくくなっています。

そこで今回のテーマにある「預金の差し押え」を例にして説明していきます。

差し押さえとは?

差し押さえとは、債権者の権利実現のために、国が債務者に財産(不動産、動産など)の処分を禁止することです(法律用語では差押え)。

差し押えについてまとめると以下のとおりです。

  • 原則として競売などの強制執行をする前段階として行われる
  • 全財産の差し押えは禁止されている(差押禁止財産といい生活上必要なものは除外)
  • 無剰余差押=執行後に配当(余り)が出ない差押と超過差押=債権額を上回る差押の禁止

カードローンを例にして説明すると、銀行や保証会社などカードローンの貸し手(債権者)が、延滞を重ねる債務者の預金口座に対して行う措置として差し押さえをします。

差し押さえまでの具体的な手順は次のとおりです。

<カードローン延滞者の銀行口座、預金の差し押さえ手順>

  1. 銀行などの債権者が、裁判所へ預金口座差し押さえの申請をする
  2. 差し押えが許可されると、裁判所から口座のある銀行に対して指示文書が送られる
  3. 指示文書を受取った銀行は即座に口座差し押えを行い、同時に関係部署へ報告する

たとえ預金口座が差し押えられたとしても、口座の利用は理論上では可能です。

差し押さえの原因となった金額、例えばカードローンの残額が5万円ならその額以外は原則出し入れ自由となっています。「理論上」「原則」と下線を引いたのには理由があります。

実際に差し押さえがあると口座の動きが一切停止されます。差し押さえが解除されるまでの間に入金や出金をする際には、その都度銀行に出向いて窓口で出金する理由を申し出て、銀行に認めてもらわなければ手続きができません。

つまり、自分の預金口座でありながら、取引を制限される状態が続くということなのです。

差し押えと口座凍結の違い

銀行口座からの入出金が停止になることを「口座凍結」といいます。

差し押さえと似ているので紛らわしいのですが、差し押さえと口座凍結の違いは次のとおりです。

  • 差し押さえは裁判所の許可を得て預金に対して行われる法的措置のこと
  • 口座凍結は代位弁済予定の預金者口座の入出金を一時的に停止すること

カードローンの場合、返済が困難となり代位弁済が決まると返済口座が凍結されてしまいます。

返済口座が凍結すると口座への出し入れは不可能。そのうえで代位弁済する日に相殺します。つまり、強制解約をしてカードローン残額の一部返済に充てられるのです。

直接的な影響~なぜ差し押さえするのか?

カードローンが延滞しているのに再三の督促を無視された。あるいは回収のメドが立たずこのままでは不良債権額が大きくなると予想される。このような貸し手としても見過ごせないときに差し押さえをすることがあります。

最近で多いのは、放っておくと債務整理や自己破産をされてしまう恐れがあると判断した場合に、少しでも回収するために早い段階で預金口座を差し押えするケースもあるようです。これらは主に消費者金融系カードローンで行なわれます。

銀行や系列保証会社では、カードローンが原因の差し押えはそう多くはありません。

いずれにせよ余程のことがない限り、銀行の預金口座の差し押さえは行われません。

労多くして功少なし!よほどでなければ差し押えしない

カードローンが原因で差し押さえが行われるケースがなぜ少ないのか、その理由はいくつかあります。

それを銀行とノンバンク、消費者金融など業種別に見てみましょう。

銀行の場合

銀行からすればカードローンは小口の融資であり、代位弁済をすれば原則取引終了となります。

代位弁済で債権を引き継いだ系列保証会社にしても、差し押さえは相当な手間と費用がかかるのでやりません。

なぜなら、差し押えにより預金口座から回収したとしても、まだ残額に足りなければもう一度差し押さえしなければいけません。

このように、強制手段でありながらも効果が薄いため、差し押えするくらいなら根気強く督促を続けて、少額でも返済させたほうがいいと考えるのです。

例えば、自分の信用情報が心配になった債務者がそのうち根負けをして、全額ご両親から借りて完済してくれるかもしれません。

また、代位弁済になっているような債務者の預金残高はそもそもほとんど残っておらず、差し押えしてもほとんど効果がないことも理由のひとつです。

ノンバンクや消費者金融系の場合

ノンバンクや消費者金融系の場合、銀行口座や預金の情報はほとんど保有していません。

そもそも無関係の銀行口座を直接的に口座凍結することは不可能ですし、差し押さえするにしても、銀行名や口座番号などの個人情報の取り扱いには限界があります。これには個人情報保護法が大きく影響しています。

あらかじめカードローンの申込時に同意を得ていなければ、仮に銀行口座の情報を知っていたとしても、差し押えのときに「本人の同意を得ずに銀行口座の個人情報を勝手に利用した」と責められる恐れがあります。

金融業者にとって個人情報保護法の影響はとても大きく、その罰則を受けるくらいなら、差し押さえなどやらないほうがいいのです。

間接的な影響

ここまでの説明で差し押えの意味や、どうして差し押さえするのか?はお分かりいただけたと思います。

次の疑問としては「差し押えされるとどうなるのか?」がありますが、これが「間接的な影響」「恐ろしいこと」の答えになります。

その答えを、次項の「期限の利益喪失」で詳しくお話します。

差し押えのあとに起こる恐ろしいこと~期限の利益喪失

これまで解説してきたように、カードローンが原因で預金口座を差し押えられることはあまり考えられませんが、もっと気をつけなければならないことがあります。

それは「期限の利益当然喪失」です。これが差し押さえのあとに起こる恐ろしいことです。

期限の利益喪失とは?

預金口座を差し押えられると、その銀行で取引中の住宅ローンや車のローン、あるいはクレジットカードなどが「期限の利益を喪失」してしまいます。

期限の利益とは、住宅ローンでいえば「毎月決められた日に決められた金額を遅れずに返済するから35年でゆっくり返済していい」という権利を持っているという意味です。

言葉遊びのようですが、融資というのは金融機関と債務者の契約であり、その契約に決められたことを守っていれば、35年という期限の利益を持ち続けられるということになるのです。

契約ですから、違反した場合にはもちろんペナルティが与えられます。

そのペナルティのひとつに「預金口座を差し押えられると、期限の利益を当然に喪失する」という条項があります。

預金口座の差し押さえは、上記のように金融業者からのものは減少傾向ですが、最近では税金滞納で市・県などから差し押えされるケースが増えており、これは社会問題にもなっているのでご存じの人も多いでしょう。

金融業者から、あるいは税金滞納で市役所から、そのいずれかの場合でも口座差し押えがあると、口座のある銀行は債権者の立場として重大な危険があると判断します。

その結果、差し押さえられた銀行で取引中の住宅ローン、自動車のローン、カードローンからクレジットカードに至るまで、原則として期限の利益をその場で喪失してしまいます。

これを「期限の利益の当然喪失」といいます。ようするに、差し押さえがあると「全額今すぐ耳をそろえて返済してください」と言われても仕方ないのです。これは住宅ローンを遅れずに返済中でも関係ありません。

こうした条文はローンやクレジットカードの規定に必ず盛り込まれていることで、連絡を受けて慌てて銀行に行ったとしても、原則は返済を求められるだけです。

期限の利益喪失には当然喪失と請求喪失の2種類がある

期限の利益喪失には「当然喪失」と「請求喪失」の2種類があります。

ひとつはこれまでに話した「期限の利益当然喪失」のことで、差し押さえのほかに自己破産や手形小切手の不渡りによる銀行取引停止などもその理由となります。

そしてもうひとつが「期限の利益請求喪失」です。これは延滞が代表的な例で、何ヵ月も延滞すると「○月○日までに延滞損害金および元金のすべてをお支払いください。お支払いのない場合には同日にて期限の利益を喪失します」といった内容の文書を内容証明郵便で送付します。

ようするに、期限を定めて「期限までにやることをやらなければ期限の利益を喪失しますよ」と予告したうえで期限の利益を喪失するやり方です。

喪失となるまでに時間的な猶予があることと、事前に通知することが請求喪失の特長です。

これに反して、当然喪失は即座に連絡不要で喪失させる措置のことですので、当然喪失のほうが事態はより重いのです。

預金の差し押さえは解除に時間と手間がかかる

差し押さえは一度やられると解除してもらうまでに手間と時間が必要です。

そして期限の利益当然喪失状態になると、取引銀行から何度も連絡が来て、あるいは来店し事情説明に追われることになります。

一概には言えませんが、その後の対応も銀行により必ずしも冷徹な対応ばかりではないと思われます。

しかし、あくまで契約上は全額返済を求められても仕方がないということはぜひ覚えておいてください。

いずれにせよカードローンで無理な借り入れはやめましょう。そして税金もしっかり納期までに支払いましょう。

カードローンなら複数からの借り入れになると数百万円の借金です。もちろん小さい金額ではありませんが、かといって住宅ローンに比べればまだ少ないでしょう。まして税金なら数万円から数十万円の単位が普通です。

これらが原因で、もしかしたら持ち家まで失ってしまう可能性があるということを忘れないでください。

この記事の執筆者

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知って得するお金の情報サイト「知っ得!カードローン」の運営者です。キャッシング専門ライターとして活動を始めてから、今年で6年目になります。貸金業務取扱主任者資格、ファイナンシャル・プランニング技能検定2級(FP)、日商簿記検定2級に合格。生活困窮者や自己破産者を救いたい一心で記事を書いています。