申請漏れが大量発生?障害年金の制度ついて

日本には、いざとなったときの生活を支える様々な制度があります。
しかし、中には必要な方に必要な制度が届いていないというケースもあります。

その一つが障害年金です。

障害年金は、病気・ケガにより生活や働くことに支障が出るようになった場合に受けられる制度ですが、情報不足や誤解から、障害年金の受給につながらないケースが発生しています。

この記事では障害年金について、なぜ障害年金は申請漏れが発生しやすいのか?そして、いざとなったときに障害年金を受給するためのポイントについてお伝えします。

なぜ障害年金をもらえない人が大量発生するのか?

障害年金は、現役世代の方が病気やケガで働くことが困難になった場合に私たちの生活を支える大切な制度です。しかし、実際は障害年金の受給につながらず、必要な支援を受けられていない人が発生しています。

まず始めに、なぜ障害年金を受給できない人が発生しやすいのかについてお伝えします。

理由①制度を知らない(申請していない)

一つ目の理由は、制度を知らないということで、これが最大の原因となっています。

年金と聞くと、老齢年金のイメージが強いですが、日本の年金制度は老齢年金以外にも、障害年金と遺族年金があります。

老齢年金だけを考えれば、「保険料を払っても損をするのでは」という考えも出てくるかもしれませんが、日本の年金制度の目的はいざとなったときの生活を支えるための保険であり、障害や死亡といった、いざとなったとき、私たちの暮らしを支える役割をもっています。

ここで、年金に対する情報不足や誤解があると、以下のように、いざとなったときに必要な給付が受けられないケースが発生してしまいます。

例えば、

  • 障害年金の制度を知らず、申請につながらない
  • 働いていると障害年金はもらえないと思い、申請をしていない
  • 障害年金の制度は知っていても自分が該当するとは思わず給付につながらない
  • 年金は払っても損だと思い保険料を未払いだったため、必要な給付が受けられない

といったケースです。

日本の社会保障制度は、「申請主義」をとっており、必要な給付は自分で申請するのが基本的なルールとなっています。

行政から制度が必要な方に案内をしたり、会社が代わりに手続を行ってくれたりということもありますが、全てではありません。

これは意地悪をしているわけではなく、行政側も、制度が必要な方がどこにいるのかを全て把握することはできないためです。

そして、制度を知らなければ自分から申請することはできないため、いくら国の制度が充実していても知らない人にとっては無いのと同じです。

制度についての細かい知識までは必要ありません。

最低限、どんな時、どんな制度があって、相談先はどこなのかという、ざっくりとした知識さえもっていれば、「何か利用できる制度があるかもしれない」という気づきにつながり、いざとなったときの安心につながります。

理由②年金(保険料)の未払いがある

障害年金が受給できない理由の二つ目は保険料の未払いです。

障害年金を受給するためには、保険料の納付要件を満たす必要があります。(詳しくは後述します)

会社員で社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している方は、会社が給与から社会保険料を天引きし納付するため保険料未払いの心配はありません。

しかし、フリーランスの方や、アルバイト勤務で社会保険に加入していない方は、保険料を自分で納付する必要があるため、注意が必要です。

国民年金の額は、月額1万6,540円(令和2年度)で所得に関係なく一律です。

年金の保険としての役割を理解せず、払っても損するだけといった理由から保険料を払っていないといった場合、そのまま放置してしまうと、いざという時に必要な給付を受けられなくなる可能性がありとても危険です。

厚生年金は厚生年金保険が正式名称ですが、国民年金には、「保険」という言葉がついていません。これは、国民年金には保険料の免除制度があり保険料を納めていない人にも給付が行われることがあるため、厳密には保険ではないためです。

独立後まもなく収入が少なく年金を払うことができないといった場合は、保険料の免除制度を利用することで受給資格を満たすことが可能となります。

ただし、申請が必要です。同じ、保険料を払っていない状態でも、保険料の免除制度の申請をしていない場合は、いざというときに保険給付を受けられなくなる可能性があるので必ず申請をするようにしましょう。

※国民年金の保険料の免除制度の詳細については、下記のサイトを参考にしてください。

参照国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度|日本年金機構

障害年金の申請漏れを防ぐためのポイント

ここからは、障害年金の申請漏れを防ぐためのポイントをお伝えします。

障害年金の申請漏れの多くは、情報不足や誤解から発生しています。

その1.がんや精神疾患でももらえる可能性がある

自分の病気やケガは障害年金の対象にはならないという誤解から、障害年金の受給につながらないケースはとても多いです。

障害年金を受給するためには、傷病名は関係ありません。
がんやうつ病、糖尿病といった障害という言葉からはイメージしづらい傷病であっても、日常生活に支障をきたしている場合は、障害年金の対象となることがあります。

その方の状態によって障害年金の1級から3級に認定されると、等級に応じた年金が支給されます。

障害年金1級から3級の判断の目安は以下の通りです。

  • 1級.活動範囲がベッドの周辺に限られる
  • 2級.活動範囲が病院内・家庭内に限られる
  • 3級.日常生活にはほとんど支障ないが、働くことには援助が必要

令和2年度版 障害年金ガイド|障害年金に該当する状態
参照令和2年度版 障害年金ガイド|障害年金に該当する状態

その2.働いていてももらえる可能性がある

次に多い誤解が、「働いていると障害年金はもらえない」というものです。

障害年金は、働いていても、傷病により日常の生活や働くことに支障が出ている場合は受給できる可能性があります。

仕事を辞めてしまうと生活ができないという思いから無理をして働き、病状を悪化させてしまうというケースもあります。

また老齢厚生年金は、賃金が高くなると年金額が減額されたり支給されたりといった調整が行われますが、原則として(※)、障害年金は働いて賃金を受け取っていても全額が支給されます。

※例外として「20歳前の障害年金」には年間所得による調整があります

障害年金に該当する状態では、通院や労働面での制限により賃金が減少するケースもあります。

そのような場合は、障害年金を受給しながら無理のない範囲で働き続けるという選択をすることで、経済的な負担、そして身体的・精神的な負担を軽減することができます。

その3.年金額は初診日に加入している年金で決まる

年金には全ての方が加入する国民年金と、会社員の方が加入する厚生年金の2種類があります。

障害年金の受給における大きなポイントは、初診日(障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師等の診療を受けた日)にどの年金に加入していたかで受けとることができる年金額が決まるということです。

初診日に国民年金のみ加入していた人は国民年金からの給付を受けることができ、厚生年金に加入していた人は国民年金と厚生年金の両方からの給付を受けることが出来ます。

例えば、20歳以降、厚生年金に加入されている方であっても、20歳前で厚生年金に加入する前に初診日がある傷病で障害年金を受給する場合は、国民年金のみ給付となります。

また、厚生年金保険の障害等級は3級までありますが、国民年金は2級までしかありません。障害等級の3級に該当する場合は、初診日に厚生年金に加入していれば受給の対象となりますが国民年金のみ加入の場合は支給対象外となります。

令和2年度版 障害年金ガイド|障害基礎年金・障害厚生年金の等級と年金額

参照令和2年度版 障害年金ガイド|障害基礎年金・障害厚生年金の等級と年金額

その4.20歳前の障害でももらえる可能性がある

国民年金に加入し保険料を支払い始めるのは20歳以降ですが、先天性の病気など20歳になる前に発症した傷病であっても、20歳以降に障害年金の障害等級に該当すれば障害年金を受給することができます。

この場合、保険料の納付要件は問われません。

20歳前の傷病により働くことが難しく保険料を納めることも難しいといった場合は、20歳以降、申請をすることで、保険料は免除され障害年金を受給することができます。

ただし、障害基礎年金(国民年金)は2級までしかないため、障害等級の1級もしくは2級に該当する必要があります。

その5.障害年金はすぐにはもらえない

障害年金は傷病が発生してから直ぐにもらえるものではない点には注意が必要です。

障害年金を受給するためには障害認定日に障害等級に該当している必要があり、障害認定日は原則初診日から1年6か月経過した日となります。

障害認定日に障害等級に該当した場合、その翌月分からの年金を受け取ることができます。

会社員で社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入している方であれば、健康保険からの給付で傷病発生から1年半までの間は傷病手当金を受給することができますが、社会保険に加入していない方は障害年金の給付が始まるまでの間の所得補償がないため特に注意が必要です。

令和2年度版 障害年金ガイド|障害認定日による請求

参照令和2年度版 障害年金ガイド|障害認定日による請求

障害年金を受給するための3つの要件

障害年金を受給するためには、以下の1~3の条件を全て満たす必要があります。

  1. 初診日:障害の原因となった病気やケガの初診日を証明できること
  2. 保険料納付:保険料の納付要件を満たしていること
  3. 障害認定日:障害認定日に障害等級に該当していること

要件1.初診日

まず一つ目の要件は、初診日(病気やケガで初めて病院に行った日)を証明できることです。

障害年金の額は、初診日に加入していた年金により決定されるため、初診日がいつだったのかの証明はとても重要です。

初診日から時間がたっており病院にカルテが無い場合は、別の方法(お薬手帳や日記など)から初診日の証明ができる可能性もあるため確認してみましょう。

要件2.保険料納付

二つ目の要件は保険料納付で、以下のいずれかを満たす必要があります。

  1. 全期間の3分の2以上の期間を納付または免除の手続が行われていること
  2. 初診日までの直近1年間に未納がないこと

また、保険料の免除を受けるためには手続きが必要です。経済的理由により保険料納付をすることが難しい場合は、必ず、保険料免除の申請をするようにしましょう。

要件3.障害認定日

障害年金は病気やケガになってすぐにもらえるものではなく、原則、初診日から1年6か月経過した日(障害認定日)の状態により障害年金の額が決まります。

障害基礎年金(国民年金)は1級、2級に該当した場合、障害厚生年金は1級から3級に該当した場合に支給されます。

障害等級の1級から3級の目安は以下の通りです。

  • 1級.活動範囲がベッドの周辺に限られる
  • 2級.活動範囲が病院内・家庭内に限られる
  • 3級.日常生活にはほとんど支障ないが、働くことには援助が必要

最後に一言!

最後に障害年金の相談先についてお伝えします。
正しい情報をいかに早く、ストレスなく得られるかはとても重要です。

障害年金について知りたいとき、筆者がおすすめするのは「街角の年金相談センター」です。

障害年金の提出代行ができる唯一の専門家は社労士ですが、社労士事務所に障害年金の申請のサポートを依頼すると費用がかかってしまいます。

しかし、街角の年金相談センターは、日本年金機構から全国社会保険労務士会が委託を受け運用しており、障害年金の専門家である社労士の方への無料相談をすることができます。

年金で困ったときは、ぜひ活用しましょう。

参照街角の年金相談センター一覧|全国社会保険労務士会連合会

ネット上にも情報は溢れていますが、正しい情報と古い情報、または、表面だけの情報で申請につながりづらいものもあります。

参考にする場合は、必ず、誰が(どういう目的で)書いている記事なのかを確認したうえで読むようにしましょう。

この記事の監修者プロフィール

原田 真吾
原田 真吾Earthrise社会保険労務士事務所 代表
プロフィールホームページ

学生時代、「満員電車の中の疲れきったサラリーマンにはなりたくない」との思いから「働き方」に興味をもち、労務管理唯一の国家資格である社会保険労務士の資格を取得。卒業後はワタミグループ介護事業に就職し、現場経験後、本社勤務スタッフとして経験をつむ。「働き方」と向き合う中で「働き方」の先にある「暮らし方」への感心が高まり、「地球一個分の暮らし」を目標として掲げる。人類が初めて地球の姿を共有したとき(Earthrise=地球の出)から、ちょうど50年の2018年にEarthrise社会保険労務士事務所を設立。「地球を愛する 地球に愛される」をあいことばに地球一個分の暮らしと、それを実現するための働き方を目指し活動中。