母子家庭(シングルマザー)がお金を借りる~母子父子寡婦福祉資金貸付金制度とは?

お金の悩み

児童のいる世帯の平均所得金額が約708万円である一方、母子家庭の平均所得金額は約270万円。その差は2倍以上です。母子家庭の半数以上は「家計」について最も困っているという調査結果も。母が抱える子どもについての悩みの6割は「教育・進学」。大半の母子家庭の家計は苦しく、子どもの教育についての心配も尽きないのが現状です。

困ったときに公的機関へ相談に行く母子家庭の母はなんと5%以下。ほとんどの人は親族や知人・友人を頼りにしているようです。公的機関には、母子家庭を支援してくれる制度があります。「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」はそのひとつ。子どもの修学に必要な授業料などを、原則無利子で借りることができる制度です。

母子父子寡婦福祉資金貸付金制度とは

「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」は、母子及び父子並びに寡婦福祉法に定められている公的な貸付制度です。都道府県、指定都市、中核市が主体となり行っています。申請するときは、周辺家族や所得の状況、保証人の有無など個々の事情を自立支援員に直接聞き取ってもらう必要があります。

急いで返さなくていい

「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」は、基本的に無利子で借りることができます。経済的な不安を抱える母子家庭にとっては、大変ありがたいシステムです。保証人がいないときでも、年利1.0%と経済的な負担は軽く済みます。返済には一定の据置期間が設けられており、借りてすぐに返済が始まる慌ただしさもありません。無理なく返済することができるよう配慮がなされているのです。その間にしっかり経済的自立への地盤を固め、安定した生活を送る準備をすることができます。

誰でも借りられるわけではない

要件をクリアし申請さえすれば一律で受給できる児童扶養手当などとは違い、「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」では個々の事情や各自治体により貸し付けの条件が異なります。手続きには審査があり、自立支援員に相談してから指定口座に入金がされるまでにかかる期間はおよそ1ヵ月。すぐに資金を手にすることはできません。ほかに資金調達の方法がないときや一時的に金欠に陥ったときなどが対象であり、誰もがすぐに借りることができる制度ではありません。

こんな人が借りられる

「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」でお金が借りられるのは以下に該当する方です。

母子福祉資金

  • 20歳未満の児童を扶養する母子家庭の母
  • 上記に扶養される20歳未満の児童
  • 父母のない20歳未満の児童

父子福祉資金

  • 20歳未満の児童を扶養する父子家庭の父
  • 上記に扶養される20歳未満の児童

寡婦福祉資金

  • 20歳以上の子をもつ母子家庭の母
  • 上記に扶養される20歳以上の子
  • 児童や子を扶養していない40歳以上の未婚の母または未亡人

貸付金は目的別に12種類+1

「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」は自治体により貸付条件が異なり、一部の貸付金については取り扱いがないこともあります。お住まいの自治体へ確認をしましょう。

1.事業開始資金(生業するための資金)

生計を立てるために始める事業について必要な設備や什器、機械などを購入するための資金です。事業計画については専門家が経営診断をし、自治体はその結果を受け、貸し付けを決定します。ある程度の自己資金を有していなければ貸し付けを行わないこともあります。貸付限度額は287万円。据置期間は1年。償還期限は7年以内です。

2.事業継続資金(親が現に営んでいる事業を継続するための資金)

事業を継続または拡張するための運転資金です。こちらも経営診断を受ける必要があります。貸付限度額は144万円。据置期間は6ヵ月。償還期限は7年以内です。

3.修学資金(子どもが就学するための資金)

子どもを高等学校、高等専門学校、大学、短期大学、大学院、専修学校に就学させるために必要な授業料、書籍代、通学費などの資金です。外国に留学したときは対象外です。貸付限度額は学校種別ごとに異なり、例えば高等学校なら月額5万2,500円が限度。最高貸付限度額は大学院(博士課程)で月額18万3,000円です。据置期間は学校卒業後6か月。償還期限は20年以内です。

4.技能習得資金(親が仕事をするための資金)

親が仕事をするうえで必要な知能技能を習得するための授業料、材料費、通学費などの資金です。運転免許取得費は、採用条件に明示されているときのみ。既に働いているときでも、生計を安定させるためならば貸し付けの対象となることがあります。予備校費用は対象外です。貸付限度額は月額6万8,000円。運転免許は46万円です。据置期間は技能習得後1年。償還期限は20年以内です。

5.修業資金(子どもが仕事をするための資金)

子どもが技能習得をするための資金です。内容は技能習得資金と同じ。

6.就職支度資金(子どもが就職をするための資金)

就職をするために必要な被服や靴などの身の回り品や通勤用自動車の購入費などの資金です。通勤用自動車の購入費は、勤務地が遠方のときや公共交通機関がないなどして自動車で通勤することが必要だと認められた場合のみ対象です。通勤用自転車代や定期代は借りることができません。貸付限度額は10万円。自動車の購入費は33万円です。据置期間は1年。償還期限は6年以内です。

7.医療介護資金(医療または介護を受けるための資金)

健康保険法に定める自己負担分や介護保険法に定める利用者負担額、医師が認めたあん摩、マッサージ、指圧等の施術費、通院にかかる交通費などの資金です。おおかた1年以内の医療または介護に対して貸し付けが行われます。貸付限度額は、医療の場合33万円、介護の場合50万円です。据置期間は6ヵ月。償還期限は5年以内です。

8.生活資金(生活を安定継続するための資金)

技能習得や失業、医療、介護を受けているときや離婚後7年未満で一時的に生活に困っているときの生活維持資金です。恒常的に生活に困っているときや生活保護を受けているときは借りることができません。貸付限度額は月額10万5,000円、技能習得中に限り月額14万1,000円です。据置期間は6ヵ月。償還期限は、技能習得中20年以内、失業、医療、介護中は5年以内、その他8年以内です。

9.住宅資金(住宅の購入や住宅の補修などをするための資金)

現に居住し所有する住宅を、補修、保全、改築、または建設、購入、増築するために必要な資金です。全体費用に対し、いくらかの自己資金を有していなければ貸し付けを行わないことがあります。貸付限度額は150万円。災害などで全壊したときなどは特別に200万円が限度となります。据置期間は6ヵ月。償還期限は6年以内(特別な場合は7年以内)です。

10.転宅資金(賃貸住宅へ引っ越しをするための資金)

住宅賃貸借契約により、入居の条件として払い込みを要求される敷金、権利金、前家賃などの一時金、運送代などの資金です。生活費を縮小するため今より安価な公営住宅などへ転居を希望するときや、急きょ立ち退きを迫られたりして余裕がない状態のときなどが対象です。貸付限度額は26万円。据置期間は6ヵ月。償還期限は3年以内です。

11.就学支度資金(子どもが学校へ就学、修業するための資金)

小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学、短期大学、大学院、専修学校、修業施設への入学にかかる入学金や制服代、自宅外通学の際の電化製品、布団などの購入資金です。貸付限度額は学校種別により異なり、例えば小学校なら月額6万3,100円が限度。最高貸付額は私立大学等で月額59万円です。据置期間は6ヵ月。償還期限は卒業後20年以内です。

12.結婚資金(こどもの婚姻に必要な資金)

挙式披露宴などにかかる経費、家具、什器などの購入費などの資金です。貸付限度額は30万円。据置期間は6ヵ月。償還期限は5年以内です。

+1.臨時児童扶養等資金(令和元年に限る資金)

児童扶養手当法改正による影響を緩和するための資金です。児童扶養手当が令和元年11月分から減額となる人が貸し付けの対象。貸付限度額は10月分との差額×3倍。据置期間は6ヵ月。償還期限は3年以内です。

母子家庭でもお金が借りられるその他の選択肢

母子家庭が利用できる貸付金は他にもまだあります。

生活福祉資金貸付金

社会福祉協議会には、教育支援資金や生活支援資金、住宅入居資金などを無利子で借りることができる生活福祉資金貸付金制度があります。母子父子寡婦福祉資金貸付金制度が借りられなかった人でも、こちらの資金を借りることができる可能性があります。

奨学金、教育ローン、生活ローン

教育資金なら日本学生支援機構の奨学金。無利息または低金利で借りることができます。手続きは学校を通じて行います。日本政策金融公庫の教育ローンや生活ローンは、来店のほか郵送やインターネットで申し込むことができ、こちらも低金利で借りられます。

すぐにお金が必要な人はカードローン

銀行カードローンや大手消費者金融カードローンを利用するのも選択肢のひとつ。無担保、無保証人で借り入れができ、資金の使い道も自由で、限度額内なら何度でも利用できることが特徴です。消費者金融なら早ければ申し込みから最短1時間程度で融資を受けられます。

注意すること

手軽だけれど金利が高いカードローン。利用は他に手がないときだけにして、返済はすぐにしましょう。借りることが当たり前になってしまうと健全な家計は作れません。日常的に利用しないようにしましょう。

30日間の利息計算例

10万円×18%÷365日×30日=約1,479円

まとめ

経済的自立とは、他人のお金に依存しなくても生きていけるということ。働いてお金を稼げば済む話ですが、家事、子育て、仕事をひとりで切り盛りしているのが母子家庭です。いくら働きたい気持ちがあっても、子どもが小さいうちは急な発熱で仕事を休むなど、常に想定外の予定変更を余儀なくされる立場。思うように収入を得ることができません。とはいえ、ある程度の収入がなければ生活は安定せず、ひとり頭を抱えがち。母子福祉資金を利用していない人の過半数は「制度を知らなかった」といいます。知らなければ何もすることができません。自ら情報を取りに行くことで人生の選択肢は増えます。まずは自治体に相談されてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者情報

・森文子/ライフイズスイート代表
元税理士事務所職員(勤務歴約20年)。二度の育休を経てFPとして起業。事業と家計をまとめて改善し根本的なところからお金に関する問題を解決していくことを重視している。相談業を中心に、執筆・講師業も手掛ける。AFP、ファイナンシャル・プランニング技能士2級、整理収納アドバイザー1級。