NISAとiDeCoの違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説
国民の資産形成を促すための税制優遇制度であるNISA(ニーサ)とiDeCo(イデコ)。普段から投資をされている方も、投資初心者の方も、ぜひ利用したい制度ではありますが、この2つの制度の違いをご存じでしょうか?
一見すると似たような制度に思えるかもしれませんが、投資をする目的や年齢、職業などによって、どちらの制度を利用する方が良いのかは異なります。
そこで、この記事ではNISAとiDeCoの違いやメリット・デメリット、上手な使い方をファイナンシャルプランナーがご案内します。
NISA(ニーサ)とは?
「NISA=少額投資非課税制度」とは、投資で得た利益に対して税金がかからなくなる制度です。
本来、株や投資信託などの投資で得た利益には、20.315%(復興特別所得税込み)の税金がかかります。例えば投資で10万円の利益を得たとしても20,315円が税金として差し引かれるため、手元に残るのは79,685円になります。
しかしNISAを利用していると税金がかからない(非課税)ため、10万円全額が自分の手元に残ります。(※別途手数料を引かれる場合があります)
NISAには、「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類あり、それぞれ利用できる金額の上限や非課税期間などが異なります。
NISAを利用するための「NISA口座」は1人1口座しか開設できないため、3種類のNISAを同時に利用することはできません。ただし、「一般NISA」と「つみたてNISA」は年単位で切り替えが可能です。
では、3つのNISAの概要を見ていきます。
一般NISA
一般NISAで投資できる商品は、上場株式、投資信託、REIT(不動産投資信託)などに限られます。
運用益(売却益や配当・分配金)に対する非課税期間は最長5年間で、投資できる金額は年間120万円(5年間で最大600万円)までです。
5年を過ぎると翌年分の非課税枠に移管するか、NISA口座以外の口座(課税口座)に移管するか、売却するかを選ばなくてはいけません。
つみたてNISA
つみたてNISAは、毎月少額を長期で積立てていくことにより、安定した資産形成を支援するための制度です。
投資できる商品は、金融庁に届け出のあった投資初心者でも利用しやすい投資信託等のみとなっております。
運用益に対する非課税期間は最長20年間で、積立できる金額は年間40万円(20年間で最大800万円)までです。
ジュニアNISA
一般NISAの未成年者用と言えます。投資できる金額は年間80万円(5年間で最大400万円)までであること以外、ほぼ一般NISAと同じです。
口座開設者は未成年者ですが、実際の管理は親権者等が行います。子や孫の進学や就職のための資産形成を目的とした制度であるため、口座開設者が18歳(3月31日時点で18歳である年の1月1日)になるまで、運用したお金や運用益を引き出せません。(※制度の見直しにより2024年以降は可能になります)
口座開設可能期間の改正
NISA口座を開設できる期間は、一般NISAとジュニアNISAが2023年まで、つみたてNISAは2037年までですが、令和2年度(2020年度)税制改正により、期間終了後は次のようになる予定です。
- 一般NISA:2024年より積立投資との2階建ての制度になり、2028年まで延長されます
- つみたてNISA:2042年まで延長されます
- ジュニアNISA:2023年までで制度が終了します
iDeCo(イデコ)とは?
「iDeCo=確定拠出年金」とは、国民年金や厚生年金などに上乗せして、自分で積み立てていく年金制度です。自分で決めた掛金額(月額5,000円から)を積み立てながら運用し、60歳以降に受け取ることができます。
受け取り方法は、退職金のように一時金として一括で受け取るか、年金として5年~20年間に分けて受け取るか、一時金+年金で受け取るかを自分で選ぶことができます。
投資できる商品は、投資信託と原則として元本が確保される定期預金や保険商品です。NISAのように税制優遇もあります。
iDeCoの3つの税制優遇
iDeCoには以下のような3つの税制優遇があります。
①運用益が非課税に
通常、定期預金の利息や投資信託の分配金には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoを利用した場合、NISAと同様に税金がかかりません。
②掛金が所得から控除
所得税や住民税は、年収から様々な控除(例えば扶養控除など)を引いた残りの金額に対して計算されますが、iDeCoを利用している場合、1年分(1月~12月)の掛金も引いて計算することができるため、所得税と住民税を少なくする効果があります。
③受け取り時にも控除
将来、運用したお金を受け取る際にかかる税金を計算する際に、「退職所得控除」または「公的年金等控除」を利用することができるため、税金を減らす効果があります。
加入資格と掛金限度額
iDeCoは、20歳以上60歳未満の学生・自営業者・主婦(夫)や、会社員・公務員の方ならほぼ誰でも加入することができますが、勤務先の規約で加入を認められていない方や、国民年金の保険料を免除されている方などは加入できません。
掛金には上限(拠出限度額)があり、ご加入の国民年金や勤務先により異なります。
表1.iDeCoの拠出限度額
iDeCoの注意点
①受給開始年齢
年金制度なので、基本的に60歳になるまで積み立てたお金や運用益を引き出せません。また、加入期間が10年未満の方は受給開始年齢が61歳~65歳(加入期間による)となります。
②手数料
加入時の手数料(初回のみ2,829円)や、掛金納付の手数料(納付の都度105円)などのコストがかかるため、iDeCoを始めて間もないころは、運用益が手数料を下回りマイナスになりやすいです。特に定期預金商品は、低金利の今は利息が手数料を上回るのが難しいかもしれません。投資信託商品は、長期で運用していくことで、運用益が手数料を上回る見込みがあります。(※ただし、運用結果によってはマイナスになる場合もあります)
③税制優遇の効果
収入が少なく所得税や住民税が非課税の方は、iDeCoの掛金が所得から控除される税制優遇の効果はありません。また、受け取り時の税金に対する優遇は、受け取り時に退職金や他の年金があれば、非課税額が少なくなる場合があります。受け取りの際は、方法やタイミングなどによって優遇の効果が異なりますので、よく考えて決めてください。
NISAとiDeCoの比較
NISAとiDeCoにはどちらも税制優遇があり、投資初心者でも運用しやすい商品を取り扱っている点は同じです。
特に「つみたてNISA」と「iDeCo」は定期的に少額を積み立てながら運用していくという点が共通しています。
ではそのほかにどのような点が異なり、どのように使い分けたらいいのでしょうか。
制度の比較
それぞれの制度を比較したところ、主な相違点としては、保有期間や非課税上限額、それに引き出しの制限です。
表2.NISAとiDeCoの制度を比較
メリットとデメリット
運用益が非課税になる以外のメリットや、注意すべきデメリットを見ていきます。
<NISA(ニーサ)>
- いつでも引き出せるため、急にお金が必要になったときでもすぐに用意することができる(ジュニアNISAは除く)
- 上場株式やREITなども購入できるため、自分で幅広い商品を運用することができる(つみたてNISAは除く)
- 保有可能期間が終了すると、すぐに売却するか、課税口座へ移管しなければいけない
<iDeCo(イデコ)>
- 所得税と住民税の節税効果がある
- 受取時期が60歳~70歳の好きなタイミングを選ぶことができるため、他の収入と調整ができ、節税効果もある
- 60歳まで引き出せない
- 手数料がかかる
- 会社員と公務員の方は加入時に勤務先の証明書が必要
どんな人に向てるか
制度の違いやメリットとデメリットを比較した結果、各制度はどのような方に向いているのでしょうか。
NISAが向いている人
- 結婚資金や住宅購入資金、教育資金の準備を目的としている方
- 株主優待を楽しみたい方(つみたてNISAは除く)
- 未成年の子どもや孫に投資を体験させたい方(ジュニアNISA)
iDeCoが向いている人
- 老後資金の準備を目的としており、60歳まで引き出せない条件で運用できる方
- 所得税と住民税の節税を目的としている方
NISAとiDeCoの上手な使い方
NISAとiDeCoは、同時に利用することも可能です。例えば、数年~20年以内に必要な資金はNISAで運用し、併せて老後資金をiDeCoで運用していくことができます。
夫婦で利用
結婚されている方は、夫婦で利用して家計全体の資産形成に役立たせたいものです。その場合、お互いの収入や年齢などによって、どう組み合わせるかがポイントです。
例えば、専業主婦(夫)の方はiDeCoのメリットである所得控除の効果がないので、iDeCoではなくNISAを利用する。また、年の差のある夫婦の場合は、年上の方がNISA、年下の方がiDeCoを利用するとそれぞれのメリットを活かすことができます。
もちろん、2人とも両方利用することも可能ですが、運用に回せる余剰金を把握してから検討してください。
家族で利用
お子様がいるご家庭は、お子様がジュニアNISA、お父様はつみたてNISAとiDeCo、お母様は一般NISA(収入額によっては+iDeCoも)というように家族全員で利用し、節税しながら必要資金に備えることもできます。
どちらの制度でいくらずつ運用するかは、目標金額や年齢、投資に回せる額によって人それぞれです。投資にあまりお金を費やせない方は、無理のない金額から始めてください。特にiDeCoは60歳まで原則引き出せませんので注意が必要です。
NISAとiDeCoを始める前に
NISAもiDeCoも投資初心者に適した制度ではありますが、多少の自助努力は必要です。どちらも将来受け取れる金額が保障されているわけではなく、運用成績によって変わることを理解しておきましょう。
どのような商品で運用していけばいいのか悩むところですが、投資のリスクを減らすために、運用商品は1つに絞らず、複数の商品を組み合わせてリスクを分散させてください。また、金融機関や商品によっては手数料がかかることがあり、特に長期で運用する場合は手数料の差が受け取り額に大きく影響するので、よく比較してからお手続きください。
今後も預貯金だけで資産を増やすことは難しいと思われます。また、ゆとりある老後を送るには国からもらえる年金だけでは足りないかもしれません。そのためにもNISAとiDeCoを上手に利用し、自分で将来に備えていきたいですね。
<参考>
執筆者:大岡 美紀
この記事の監修者プロフィール

- ファイナンシャルプランナー
- プロフィール/ホームページ
金融教育を広めるために、楽しみながらお金について学ぶ親子向けのマネーセミナーを開催。放課後子ども教室やPTA主催のセミナー講師も務める。執筆活動や大人向けのマネーセミナーでは日常生活や老後に役立つお金の情報を伝え、子どもとママのためのファイナンシャルプランナーとして活動中。
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