がん保険と医療保険の違いとは?

1974年にアメリカンファミリー生命(現・アフラック)ががん保険の販売を開始して以来、がん保険というのは加入しておくべき保険の一つとして多くのファイナンシャル・プランナーや保険募集人が勧めています。

脳卒中・急性心筋梗塞・がん(悪性新生物)は三大疾病と呼ばれていますが、前の2つの罹患者が減少する一方で、がんになる人は増加の一途を辿っており、2017年に新たに診断されたがん(全国がん登録)は977,393例(男性558,869例、女性418,510例、性別不詳も含む)となっております。
出典最新がん統計|国立がん研究センターがん情報サービス

同じ年に生まれた赤ちゃんの数が946,060人なので、大変な数といえるのではないでしょうか。男性の3人に2人、女性の2人に1人は一生のうちにがんに罹患すると言われているのです。

一方、2020年の時点で、2010年~2012年にがんと診断された人の5年相対生存率は68.6%、2004年~2007年にがんと診断された人の10年相対生存率は58.3%となっており、5年生存率が3割程度だった昭和の時代と比べると格段に伸びています。
出典全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について

そしてがんの部位にもよりますが、治療期間は長期化しており、5年10年と治療を続けている人も珍しくありません。

公的な健康保険には「高額療養費制度」というものがあり、何百万何千万という費用がかかる治療を受けたとしても、健康保険制度で認められた治療であれば患者さんの月間の自己負担には上限が設けられています。それでも、治療期間が長期化することにより経済的負担ががん患者さんを苦しめます。治療の終わりが見えないということになるとメンタル面での苦しみも大きなものになります。

いわゆる「医療保険」や、生命保険に付加されている医療特約に加入されている方は多いと思いますが、がんになった場合にはそれで十分なのか?医療保険とがん保険はどう違うのか?と思われる方は多いのではないかと思います。

この記事では、がん保険と医療保険の違いを解説させていただきます。

がん保険の給付金はがんにしか出ない

医療保険があらゆる病気・ケガに対応しているのに対し、がん保険というのはがんになった場合にのみ給付金が出る保険です。

その代わり、がんになった時の保障はかなり手厚くなっています。

最近のがん保険は入院や手術の有無に関わらずお金が出る

昭和の時代、がんというのは死の病で、何か月も何年も入院し何度も手術を重ね、それでも多くの人が命を落とす病気でした。

今は医療が進歩し、がんと診断されても1週間程度で退院する人もいますし、ステージ1のような初期の段階で発見された場合には入院しない場合もあります。

治療法も、以前は「がんになったら手術」という考え方でしたが、今は放射線治療や電磁波温熱療法、抗がん剤などの化学療法、重粒子線・陽子線のような先進医療など多岐にわたっています。そして、これらを組み合わせて一人ひとりの患者さんにとって最適な治療を行っていくのです。

治療の効果を高めるためだけではありません。かつては手術や抗がん剤の副作用がかなり大きかったのですが、最近では患者さんの生活の質をなるべく落とさないように配慮する「低侵襲治療」が今のがん治療なのです。

それぞれの治療方法についても進歩しています。手術療法について、以前の開腹手術では合併症や感染症のおそれがあるため、傷口がふさがるまで療養のために入院を余儀なくされていましたが、今では内視鏡手術やロボット手術など、身体への負担が少ない手術が主流になっています。

放射線についても、例えばトモセラピーと呼ばれる機械を使って、患部をムラなく照射するような機器が次々と導入されています。

特に抗がん剤については、従来のような健康な細胞にも影響を及ぼす「殺細胞性抗がん剤」よりも、がん細胞だけをターゲットにする「分子標的薬」という薬が主流になっています。そして、一人ひとりのがんの種類や、既往症の有無などを考慮して薬の種類・量・投薬のタイミングを考慮しながら治療する「腫瘍内科医」というお医者さんが増えています。先日「アライブ」というドラマにもなりましたが、それでも腫瘍内科医の数は米国に比べると圧倒的に少ないのが現状です…。

がんを叩くだけでなく、再発を防止するための抗がん剤もあり、投薬期間は長期化するケースもあります。

抗がん剤というと点滴のような型を連想される方は多いと思いますが、最近は経口投与や飲む抗がん剤も多くあります。そうなると必ずしも入院の必要はありませんし、通院もそれほど頻繁に行う必要はありません。

従って普通の医療保険の基本的な保障である「入院給付金」や、手術・放射線治療に対する給付金が十分に出ないケースが増えております。

※20年以上前のがん保険に加入している場合も、同様に十分な給付が受けられない場合があります。

最近のがん保険では、がんと診断された時や治療が長期化した時に出る「診断給付金」や化学療法による治療が長期化した場合に出る「抗がん剤給付金」など、入院や手術の有無に関係なくお金が支払われ、がん治療で出費が続いた場合でもそれに応じた給付がされるようになっています。

がん保険はセカンドオピニオンなどの治療サポートサービスがある

前項で書いた通り、今の時代は様々ながん治療方法があり、選択肢が多い一方でがん患者さんはどの治療を選べば良いのかわからないという状況にあります。より良い治療を求めて医療機関を転々とする「がん難民」という言葉があるくらいです。

「がん難民」の数は、数十万人とも100万人ともいわれています。保険会社にもよりますが、がんになった方が適切な治療を選択できるように、独自のセカンドオピニオンサービスや、自分が望む治療を受けられる医者を紹介するサービスを保険加入者には無償で提供している場合があります。

がん保険のほうが加入時の審査基準が緩い

通常の医療保険ですと、高血圧であったり血糖値の値が高いなど持病がある場合には加入できなかったり、通常より高い保険料率での加入になったりしますが、がん保険というのは基本的には過去にがんになってなかったり、がんの疑いをかけられたりしていなければ加入できます。

※保険会社によっては、他の持病がある場合にはがん保険に加入できない場合もあります。

実際には、糖尿病になっていたらすい臓がんになりやすいとか、肥満の人は通常の人より食道・膵臓・肝臓・大腸・乳房(閉経後)・子宮体部・腎臓のがんになりやすいとか、普通の医療保険に入れない人はがんになる可能性は高くなります。しかし加入できる場合は少なくないので、持病を持っている方こそ、がんになる前にがん保険に加入しておくべきです。

高齢になってから加入すると保険料が高くなる

以前は医療保障・がん保障というのは、10年更新の「定期型」ばかりでした。今ほど平均寿命が長くなく、高齢者の医療費は無料だったこともあり、若いうちの保障があれば十分という考え方だったのです。

しかし今は平均寿命が伸びて人生100年時代と言われており、また、高齢者でも医療費負担が発生するため(75歳以上の後期高齢者の場合、現在は1割負担ですが2割にするという話も出ています)、医療保険もがん保険も一生保険料が変わらない「終身型」が主流になりつつあります。

加入した年齢で一生の保険料が決まるので、早いうちに加入しておいたほうが保険料負担は少なくてすむのですが、がんというのは特に男性の場合には高齢になってから増える病気ですので、通常の保険と比べても高齢になってから保険料が高くなる傾向がより一層顕著です。

また、若いうちにがんになる人は比較的少ないとは言え、「AYA世代:Adolescent and Young Adult:思春期・若年成人のがん」は治療が困難な場合が多いです。

先にも述べました通り、がん保険というのはがんになっていなければ加入できる場合が多く、がんになってしまうと入れません。

※がんを経験した人でも加入できるがん保険もありますが、条件が厳しく保険料も高いです。

今は自分とは関係ないと思っても、若い人は早いうちにがん保険に入っておくべきです。

保険が有効になるまで3カ月間の「待機期間」がある

先にも述べました通り、がん保険というのは普通の医療保険と比べると給付される金額が段違いに多いです。

そのため、がんになるリスクの高い方が急いでがん保険に加入してがんと診断されたると、給付金の額が多くなるので、それをまかなうために「保険料が高くなる」ということになってしまいます。

そうならないために、がん保険には3カ月間の「待機期間(待ち期間)」があり、その間にがんと診断された場合には契約は無効になります。

自分はがんかもしれない、と感じてから加入するのではなく、健康に異常がない早いうちに加入しておきましょう。

まとめ

以上、医療保険とがん保険の違いを述べさせていただきました。

ファイナンシャル・プランナーの中には、通常の医療保険よりもがん保険のほうがより一層重要と言う人も少なくありません。

遺伝や生活習慣なども作用しますが、偶発的要因(運)でなる場合が多い病気と言われています。まだ加入していない人は是非加入しましょう。

また、10年以上前のがん保険は現在の医療状況に対応し切れていない場合がありますが、新たに入り直さなくても、今の保険に足りない保障だけを追加することで保障を充実させることができる場合もあります。今加入している保険会社に相談してみましょう。

  • 医療保険だけではがんになった場合には対応し切れない、がん保険にも加入しておくべき
  • 保険料の安い若いうちに加入しておくべき
  • 持病を持っている人は特に入っておくべき

この記事の監修者プロフィール

小林 恵
小林 恵福運ライフ代表
プロフィールホームページ

1970年生まれ。東京・大阪でサラリーマン生活の後、2012年に郷里の福井に帰郷し保険代理店業に従事。生命保険募集人資格の研修を受けながら、このような社会保障・税金などお金の話は国民全員が絶対に知っておくべきだと思いFP資格を取得。セミナー講師・記事執筆を中心に活動中。家計相談はオンラインでも対応可能。