法人経営者が個人向けカードローンの審査を通る方法
法人経営者がカードローンを手に入れるには、カードローン審査においてさまざまな条件をクリアしなければなりません。
これが公務員・会社員等の給与所得者だと審査のポイントも絞りやすく、カードローン会社の求める条件を満たしており、さらに本人の信用に問題がなければカードローンの審査は通りやすいです。
しかし、法人経営者の場合、その持つ特性のため、一般的にカードローンの審査を通るのは簡単ではありません。
ではなぜ法人経営者だとカードローンを手にすることが難しいのでしょうか?また、その特性とは何でしょう?
この記事では、法人経営者が個人向けカードローンの審査を通る方法について解説します。
法人経営者がカードローンの審査に通りにくい理由などについても説明します。
法人経営者はカードローンの審査に通るには?
法人経営者は個人事業主と並び、以前からカードローンの審査に通るのは難しいという説があります。
果たしてこの説は本当なのでしょうか?まず、そもそも法人経営者でもカードローンの申し込みを受け付けしてくれるかどうか、その点から確認してみましょう。
法人経営者でもカードローンの申し込みは可能
某銀行カードローンの申込条件を確認すると、申し込みできる人は「年齢が満20歳以上65歳未満の国内居住の個人で保証会社○○の保証が受けられる方」となっています。
これを同様に大手消費者金融の某社で確認してみると「年齢が満20歳以上69歳以下の本人に安定した収入のある方」となっており、特にそれ以外の条件はついていません。
これはつまり、法人経営者でも業者の申込条件を満たすことができれば、カードローンの審査を受けられるということを意味しており職業による違いはないといえます。
つまり、法人経営者はカードローンの審査が厳しいというのはどうも他の面で原因がありそうですね。次の章でその原因を詳しく探っていくことにしましょう。
法人経営者がカードローンの審査に不利な理由
カードローンの審査で法人経営者が不利な理由には以下のような原因が考えられます。
給与所得者に比べて収入の安定性に欠ける
法人経営者がカードローンの審査で厳しく扱われるのには、給与所得者に比べて収入の安定性に欠ける点が要因としてあります。
公務員や会社員は通常、給与所得者として毎月1回、定期的に給与が支給されるので、その組織や会社が安定している限り給与も継続して支払われることになります。
金融機関がカードローン審査で最も重視しているのが、借入れの毎月返済に必要な返済財源があるかということです。
この点、給与所得者は安定継続した給与があり、まさにカードローン会社にとって融資するのに理想的な顧客となります。
ところが法人経営者となるともちろん法人にもさまざまなレベルがありますが、中小企業の場合は会社の業況が景気の動向に左右されやすく、法人経営者の個人所得も同じように影響を受けてしまいます。
そのため金融機関にとって経営者の所得をどの程度安定した個人所得とみなすか、給与所得者に比べて判定するのが難しく、それがカードローン審査を難しくする原因ともなっているのです。
法人経営者はカードローンの審査ではもともと評価が低い
金融機関がカードローン審査を行う場合、一般的には仮審査、本審査の過程を経て意思決定します。その仮審査で主に行われるのがスコアリングです。
スコアリングとは、申込者の持つ属性を金融機関独自の評価で点数化し、業者の持つビックデータと相対比較しながら、最終基準点以上に達した人を仮審査の合格者とする判定方法です。
ところが法人経営者はこのスコアリングの判定シートにおいて、最初から評価の値が低く設定されており、法人経営者という属性だけでハンディを背負って審査スタートしなければなりません。
これは筆者が元銀行員であり、旧式ですが実際にスコアリングを手書きのシートを使って審査した経験を持っているので、間違いのない事実として断言できます。
そのため経営者ということに加え、さらに他の属性評価も低い場合にはスコアリングの結果も悪くなり、給与所得者に比べてどうしても審査に落ちやすくなっています。
カードローンを貸しても事業資金に使われるリスクがある
仮に金融機関が法人経営者にカードローンを貸しても、その資金が個人用でなく事業資金に使われるリスクがあるため、どうしても審査に通りにくいです。
経営者は法人を代表し経営責任を負って会社運営を行っています。そのため経営者は、会社の経営がうまくいくよう常に資金繰りを気にしており、資金ショートを避けるための方法を模索しています。
もし法人の業績が悪くて取引銀行からの信用が低いと、当然ですが事業資金も借りにくくなります。
一方、もし資金を急ぐような場合には、経営者としても他の資金調達を考える必要に駆られます。そして仮に手元にカードローンがあり使える枠が残っていると、経営者としても苦肉の策としてそれから借入して事業資金に使ってしまうかもしれません。
ただし、銀行カードローンでは、その利用目的を個人用に限定しており、事業資金に使うことを禁じています。なぜなら個人向けカードローンと事業者向けローンは金融機関での審査方法が違うからです。
ところがいったん法人経営者にカードローンを貸すと、銀行が経営者の使い方についてひとつひとつチェックするわけにもいきません。
そこで銀行としても、そのような貸付リスクを避けるため、最初からカードローン審査では法人経営者に対して審査基準を厳しくして審査を通りにくくしているのです。
一人法人や創業1年未満の法人経営者は審査に落ちやすい
法人経営者の中でも、一人法人や創業1年未満の法人経営者はカードローンの審査に落ちやすい傾向が強いです。
2006年の会社法の改正で、それまでの会社設立の手続きが簡素化され、例をあげると、資本金が1円から株式会社の設立ができるようになり、また取締役も1名からOKになりました。
その結果、発起人が一人でも法人が設立可能になり、またその人がそのまま法人経営者になることもできたので、以後一人法人がたくさん生まれています。
しかし、一人法人では経営者も1名であるため、会社もそれほど大きくできず規模も小さいままです。これは創業1年未満の事業実績が乏しい法人の経営者の場合でも同じことがいえます。
そのため、このようなタイプの法人経営者がカードローンを金融機関に申込しても、未だ信用面で弱いことを理由に審査に通りにくくなっています。
経営者タイプ別にカードローンの審査を比較
次は、同じ事業者同士でどちらがカードローンの審査に通りやすいか、経営者の比較をしてみましょう。
株式会社と合同会社の経営者ではどちらが審査に通りやすい?
株式会社の経営者、合同会社の経営者、どちらの法人経営者がカードローンの審査に通りやすいかというと、やはり総じて株式会社の経営者が審査で有利です。
合同会社というのは2006年の新会社法で新しく生まれた会社形態です。また、改正と同時にそれまでの有限会社という会社形態が消滅しました。
株式会社では「会社を所有する者と会社を経営する者は別」という考えが根底にありますが、合同会社では「会社を所有する者と会社を経営する者は同じ」という思想があり、現在の潮流に沿う形で法律の見直しが行われたのです。
合同会社では、株式会社と同様、出資者はその出資の範囲内において有限責任がありますが、利益や権限の範囲については出資した社員間で協議して自由に決められるというメリットがあります。また、合同会社では設立のコストも株式会社ほどはかかりません。
このように合同会社は、経営としての機動性が高いことや、手間やコストがあまりかからない点で株式会社より利便性があり、小規模経営には適した会社形態といえます。
しかし、その分だけ事業規模が小さくて景気に左右されやすいため、株式会社に比べて信用面で劣ります。
その点で、仮に合同会社の経営者がカードローンを申込みした場合、株式会社の経営者に比べてどうしても審査では劣るということになります。
法人経営者と個人事業主ではどちらが審査に通りやすい?
それでは法人経営者と個人事業主を比べた場合、どちらがカードローンの審査に通りやすいでしょうか?こちらはやはり法人経営者に軍配が上がります。
個人事業主の場合、法人経営に比べて事業規模も小さく、業況が景気に左右されやすい傾向がさらに強いです。
その上、個人事業主では個人と事業の境界があいまいなため、法人経営者以上に個人向けに貸付けたカードローンが事業資金に使われるリスクが高いので、金融機関としても審査により慎重になります。
その点で法人は、銀行や取引先、また税務署に対しても会社の財務内容を透明化しておく必要があり、決算書類を通じて法人経営者の個人所得も比較的分かりやすくなっています。
上記の点からも法人経営者のほうが個人事業主よりカードローン審査では有利といえるでしょう。
法人経営者がカードローンの審査に通るための対策
それではこの章ではこれまでの解説を踏まえて、法人経営者が審査でのハンディキャップを乗り越え、どのようにすれば審査に通りやすくなるか、その対策やコツについて解説します。
経営者の個人所得が安定している証拠を金融機関に示す
法人経営者全員がカードローン審査でハンディを背負っているわけではありません。
経営者の個人所得が安定している事実をきちんと金融機関に示すことさえできれば、もちろんカードローン審査に通る可能性もあるし、場合によって給与所得者以上の評価が得られる場合もあります。
そしてどのように金融機関に証拠を示すかというと、一番に売上や利益を安定的に出している法人の決算書を最低2~3期分見せるべきです。
そしてその決算書類の中には経営者に対する報酬明細書もあるので必ず添付しておくようにしましょう。また、決算数字への説得力を持たせるために、公的機関から交付された所得証明書を付けることも忘れないようにしてください。
通常、カードローンの申込限度額が50万円以下であれば、所得証明書の提出が原則不要となっている金融機関は多いのですが、法人経営者は申込限度額にかかわらず、金融機関から確認書類の提出を求められる前にあらかじめ用意しておくことをおすすめします。なぜなら、申込書と一緒に収入証明書を添付したほうが申込者に対する金融機関の印象は良くなるからです。
信用情報をきれいにしておく
カードローンの審査を通るためには、本人の信用情報をきれいにしておくことが必須の条件です。
カードローンの審査では、自社および保証会社が提携している外部の信用情報機関に申込者の信用情報を問い合わせることが審査の基本となっています。
カードローン会社と保証会社が審査時にチェックしている信用情報は以下のとおりです。
- 過去の取引で返済において長期延滞はないか
- 過去5~10年以内に破産や債務整理等を行っていないか
- ローンやクレジットカードの契約数や返済状況は適切か
過去から現在に至るまでローンやクレジットカードが適切に利用されていれば、本人の信用情報はきれいなままなのでカードローンの審査は通りやすくなります。
他社借入件数や利用残高を減らしておく
この項目は金融機関の信用情報機関への問い合わせでもチェックされますが、法人経営者がカードローンの申込前に他社の借入件数や利用残高を極力減らしておくのも審査を通りやすくする方法のひとつです。
金融機関では、申込人が他社で多くのローン契約があると、仮に自社が貸してもローン全体を把握し管理し難くなるので嫌う傾向があります。
とりわけ法人経営者については、貸しても事業資金に使われるリスクから、すでにカードローンの契約が多いと、「他社同様、うちが貸してもやはり事業資金に使われてしまうのではないか」という懸念から審査に落ちやすいです。
そのため申し込んだカードローンをメインに利用したいなら、他社で契約しているローンはもし利用枠だけなら事前に解約しておくか、利用残高を減らすような対策を立てておく必要があります。
法人と個人間の資金の貸し借りは極力しない
法人経営者の場合、法人と個人間の資金の貸し借りは極力していないことを金融機関に示すことがカードローン審査を通りやすくする方法です。
特に金融機関に提出した法人の決算書において、法人から経営者への貸付金(社長貸付)があると、金融機関は「この経営者は法人と個人の区別がついていない」と厳しく見がちです。
なぜならこのような貸付金は回収の可能性が低い資産とみられることが多いから。
また、逆に個人から法人への貸付金(社長借入)があってもよくありません。
特に金額が大きかったり、その資金の原資が経営者の個人向けカードローンの借入からだったりすると余計にまずいです。
いずれにしても、法人と個人間の資金の貸し借りは極力ないことが望ましく、仮に行うにしてもちゃんと貸し借りにつき、金銭消費貸借証書を作成して証拠を残しておくほか、金利もきちんと払っておくほうが望ましいでしょう。
カードローン審査においては、金融機関にできるだけ悪い印象を与えないようにすることが審査を通りやすくするコツです。
事業資金を借りている金融機関でカードローンも借りる
もし法人ですでに事業資金を借りている経営者がいれば、その金融機関にカードローンを申込みすることが審査を通りやすくする秘訣です。
銀行や信用金庫は法人の取引で融資があれば、経営者とその家族、その法人で働く従業員の個人取引まで含めて総合取引することを目指しています。
なぜなら銀行員は関連取引でシナジー(相乗)効果を狙ったほうが、手っ取り早く銀行の業績を上げられることをよく知っているからです。逆に経営者としてもこの銀行のノウハウを利用しない手はありません。
法人の業況も銀行との取引ぶりも良好なら、わざわざこちらから頼まなくても銀行員から経営者にカードローンを作ることを提案してきます。
また、経営者から銀行に申込みしても、本人に信用面で問題ない限り、前向きに検討してくれます。
経営者ならまずは融資取引のある金融機関でカードローンの申込みを検討しましょう。
大手消費者金融のカードローンで借りる
大手消費者金融でカードローンを借りるのも審査を通りやすくする方法です。
法人経営者がカードローンを申込みする場合、申込先として銀行(含む信用金庫)と消費者金融があります。
ただし、法人経営者、とりわけ中小企業の経営者の場合、その信用度の低さから銀行カードローンでの審査はかなり厳しく、申込みしても誰でも審査に通るわけではありません。
一方消費者金融は金利が高い分、審査基準は銀行と比べるとやや緩めで、法人経営者でも収入が安定していることさえ示せれば、審査に通ってカードローンが借りられる可能性はあります。
とりわけ大手消費者金融では、事業者に対しても多くの融資実績もあり、同じカードローンを借りるなら銀行カードローンでなく、まずは大手消費者金融に申込みするのもいいでしょう。
雇われ経営者はオーナー経営者よりもカードローンを借りやすい
法人経営者がその法人のオーナー経営者ではなく、オーナーに経営を委託された経営者である場合、カードローンを申込みすれば審査に通りやすい傾向があります。
オーナー経営者は所有している法人の業績に自分の役員報酬も影響を受けがちです。
しかし、雇われ経営者の場合、経営を引き受けるときにオーナーから報酬を固定額で呈示されていることも多く、いわば一般会社員と同じ給与所得者とみなすこともできます。
もし申し込みを受け付けた金融機関が同様な判断をすれば、雇われ経営者の場合、オーナー経営者よりカードローン審査に有利となる可能性が高いです。
事業資金と個人向けのカードローンを上手く使い分ける
法人経営者がカードローン審査に通りやすくするコツは、事業資金用に法人カードローンを作り、それを持って利用していることを金融機関にアピールすることです。
法人経営者がカードローンの審査に通りにくい理由のひとつが、カードローンを事業資金に使われるリスクがあることでした。
ところが、法人経営者がすでに法人カードローンを作っており、それを事業資金用に使っていることが分かると、金融機関も「この経営者は借入資金を公私混同しない」と好意的にとらえてくれる可能性があります。
これは元から事業分野と個人生活の境界があいまいな個人事業主と異なり、法人と個人を明確に分けている法人経営者のメリットです。
もちろん経営者が関わる法人の規模によっても分離の程度は違いがあります。
しかし、法人経営者が法人資金と個人資金は明確に分けて管理していることをアピールして金融機関の審査を受ければ、カードローンは借りやすくなるでしょう。
法人カードと法人カードローンは機能が違う
会社経営者が法人カードローンをうまく利用するのは良いのですが、一方で法人カードと法人カードローンはその利用目的や機能がまったく違うので混同しないよう注意してください。
法人カードとは法人クレジットカードのことです。個人が決済や買い物で普通に使っているクレジットカードを、法人の経費の支払いに使用できるようにしたものが法人クレジットカードです。
法人カードは会社経営者が持てるだけではなく、利用した経費の決済口座を共通に設定し、カードを複数発行して他の会社役員に持たすこともできます。こうすれば経費の管理を一本化して複雑な経理業務の労働コストを削減することも可能です。
一方、法人カードローンは借入目的で法人の資金繰りに利用します。このように法人カードと法人カードローンは明確に用途や機能が違うので間違えないようにしてください。
まとめ
法人経営者がカードローン審査をどのように通りやすくするか、審査を受けるうえでの問題点、またその対策やコツについて詳しく解説してきました。
この記事のまとめ
- 法人経営者も、他の申込者同様、カードローンを申込みして審査を受けることはできる
- 法人経営者は、役員報酬が会社の業績や景気の影響を受けやすい、カードローンを事業資金に使ってしまうリスク等の理由から金融機関の低い評価を受けやすい職業である
- 給与所得者と比べるとカードローン審査に通りにくい傾向がある
- カードローン審査に確実に通るには、給与所得者以上にさまざまな対策をして審査に臨む必要がある
この記事が、これからカードローンの審査を受けられる法人経営者の参考となれば幸いです。